更新日: 2019年09月25日

Health共済フォーラム 2019年9月号掲載「Health&Care」

栄養過多なのに栄養失調!?健康の基本 食生活を見直そう

私たちの体は、日々の食事で摂取する食べ物からできています。心身の健康の鍵は、食生活が握っているといっても過言ではありません。しかし飽食の現代、食べ過ぎによる肥満をはじめ、三度の食事をきちんと摂っているにもかかわらず低栄養(栄養失調)に陥る危険性も指摘されています。
なぜこうした事態が起こるのか、理想的な食生活について考えてみましょう。

理想的な食生活とは?

厚生労働省と農林水産省は、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安として、「食事バランスガイド」を策定しています(図1)。コマの形をモチーフに、摂取する目安の多い順に「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」を5つの料理区分で紹介。水分をコマの軸に、そして『楽しく適度に』というメッセージとともに菓子・嗜好飲料もコマを回すひもとして描かれています。
食事1品当たりの標準的な量は、「SV(サービング)」という単位で表されます。ご飯小盛り1杯や食パン1枚は「1つ(SV)」、麺類は「2つ(SV)」のように、日常的な数え方に近い感覚で食事量をチェック、コントロールできます。どれだけ食べたらよいか、適量は性別や年齢、体型、身体活動レベルなどで異なりますので、ご自身に照らし合わせて図2で確認してみましょう。

画像:図1 「食事バランスガイド」が示す、料理区分ごとの1日分の適切な食事量
画像:図2 性別や年齢などで異なる適切な食事量の目安

1日3食 食べていても起こり得る「新型栄養失調」

栄養失調といえば、真っ先にイメージするのが食糧事情の悪かった戦時中。しかし飽食の現代でも、偏った食生活が引き金となって起こる、新型栄養失調が懸念されています。
例えば、菓子パンや総菜パン、おにぎりなどで空腹を満たす食生活の人は、タンパク質不足になりがち。筋肉量が減少して脂肪が燃えにくい体になり、痩せにくくなる他、免疫力の低下や貧血、抜け毛、むくみなどの症状が起こる恐れもあります。
肉料理などでカロリーは十分に摂っているが野菜類は嫌いという人は、ビタミン・ミネラル・食物繊維の不足が心配されます。やはり基礎代謝や免疫力の低下につながり、血管や細胞の老化なども進みやすくなります。

画像:1日3食 食べていても起こり得る「新型栄養失調」

便利な時代だからこそ・・・食生活が乱れやすい

お腹が空けば簡単に、調理しなくてもすぐに食べられるものが手に入る便利な世の中。その反面、つい食べすぎたり、偏ったメニューになるなど、食生活は簡単に乱れてしまいがちです。バランスを欠いた食生活は健康に悪影響を及ぼし、さまざまな生活習慣病につながる恐れもあります。

炭水化物と脂質の過剰摂取

働き盛りで忙しい世代にありがちなのが、インスタント食品やファストフード、丼物中心の食生活です。手間なく素早く食べられて食事時間の短縮になる一方、炭水化物と脂質の摂り過ぎにつながり、生活習慣病を招きやすくなります。

画像:炭水化物と脂質の過剰摂取

ビタミン・ミネラル・食物繊維の不足

野菜の目標摂取量は、1日当たり350gとされています。さまざまな種類の野菜を食べて、ビタミンやミネラル、食物繊維をしっかり摂りましょう。『○○抜き』『○○だけ』などの安易な食べ方は避け、献立作りを工夫してバランスのよい食事を心がけることが大切です。

画像:ビタミン・ミネラル・食物繊維の不足

タンパク質不足

過剰なダイエットや強すぎる健康志向によって、肉や魚、大豆食品などを敬遠しがちな人は、タンパク質不足に陥りやすくなります。サラダやスムージーなど野菜ばかりで食事を済ませようとする若い女性や、食自体が細くなる高齢者にも起こりやすい傾向にあります。

画像:タンパク質不足

塩分の過剰摂取

日本人の食事摂取基準による1日の食塩の摂取量は、18歳以上の女性で7.0g未満、男性で8.0g 未満です。しかし実際の摂取量はしょうゆやみそを使う和食の特徴から、男女ともに10g前後を推移。高血圧への影響が懸念されています。

画像:塩分の過剰摂取

現代人のための食生活改善レシピ バランスのよい朝食で1日をスタート!大豆ファースト御膳

材料(2人分)

丼

ご飯(温かいもの):茶碗2杯分、納豆:2パック、梅干し:1個、めかぶ:1パック、おろし山芋:120cc相当分、卵:2個、しらす(じゃこ):大さじ2、ごま油:少々

みそ汁

かぼちゃ:4切れ、インゲン:2本、みそ:大さじ1、出汁:300cc、小口ネギ:適宜

写真:現代人のための食生活改善レシピ バランスのよい朝食で1日をスタート!大豆ファースト御膳

作り方

丼

1 納豆2パックに対し、ごま油を少々加える。梅干しもちぎって入れ、よくかき混ぜる。
2 卵2個分の卵白を白っぽくなるまで勢いよく1分ほど泡立て、おろし山芋を混ぜる。
3 盛り付けたご飯の上に、1、2とめかぶ、卵黄、しらすを乗せ、お好みでしょうゆをかける。

みそ汁

1 かぼちゃは種とわたを取り、レンジに1分ほどかけたら1cmの厚さに切る。インゲンは筋をとり、3等分に切る。
2 鍋に1の野菜と出汁を入れ、野菜に火が通ったらみそを溶く。火を止めて盛り付け、お好みで小口ネギを散らす。

知っておきたい栄養豆知識

山芋は「山薬」と呼ばれるほど滋養があり、栄養価の高い食材。消化酵素のアミラーゼや食物繊維を多く含み、夏に弱った胃腸の回復にも効果的です。さらに、めかぶや海藻でミネラルを十分摂取しましょう。かぼちゃはβカロテンやビタミンCが豊富。腹持ちもよく朝食に最適です。

画像:料理家 井澤由美子

レシピ提供:
料理家 井澤由美子