更新日: 2022年09月22日

Health共済フォーラム 2022年9月号掲載「Health&Care」

しっかり眠って心身をメンテナンス ストレスに負けない体をつくる睡眠

厚生労働省「国民健康・栄養調査」(令和元年)によると、睡眠時間が6時間未満の人が約4割もおり、世界的にも睡眠不足の国といわれています。忙しいときには睡眠を十分に確保できなかったり、ストレス解消のために趣味に熱中して睡眠時間が削られたりすることもあるかもしれません。しかし、心身が疲れているときこそ睡眠が大切であり、しっかりと眠ることで体と脳が休まりメンタルの回復にもつながります。ストレス緩和の特効薬ともいうべき睡眠を見直してみませんか?

睡眠の5大効果

睡眠の役割とは何か。それは「心身のメンテナンス」です。私たちが眠っている間、体の中ではメンテナンスが行われており、脳や内臓、自律神経系などの不具合を修復して翌日の活動に備えています。そして、心身にさまざまな効果をもたらしてくれます。

画像:睡眠をとる女性のイラスト
  • 疲労回復

    睡眠中に分泌される成長ホルモンは、骨や筋肉の成長促進だけでなく、細胞のダメージを修復し、新陳代謝を高めて疲労物質の排出を促します。

  • 記憶の整理

    睡眠中に脳内が整理され、大切な情報は記憶として定着・保持されます。
    一方、嫌な感情や出来事は、不要な記憶として整理する働きもあります。

  • 自律神経の調整

    睡眠が不足すると交感神経優位の状態が長くなり、思考力の低下を引き起こしたり、不安感や抑うつ感などを起こしやすくなります。

  • 肥満の予防

    十分な睡眠は食欲を増進させるグレリンというホルモンを抑え、食欲を抑制して代謝を促進するレプチンを分泌させます。

  • 美肌効果

    成長ホルモンが肌を生まれ変わらせるターンオーバーを促進。また、睡眠ホルモンのメラトニンが持つ強力な抗酸化作用で肌の老化を防ぎます。

睡眠不足によってリスクが高まる疾患

睡眠不足は心身を疲弊させるだけでなく、さまざまな疾患のリスクも高めます。例えば、血糖値をコントロールするインスリンの働きや分泌が低下し、糖尿病のリスクを高めるほか、高血圧脂質異常症などの生活習慣病も起こりやすくなります。
また、自律神経のバランスが乱れてうつ状態につながる恐れも。そして、睡眠中には認知症の原因ともいわれる脳内のアミロイドβが老廃物として排出されますが、睡眠不足が続くとこの働きが低下し、アルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性もあります。

図:睡眠不足によってリスクが高まる疾患
睡眠が不足するほど…ストレスに弱くなる!

ストレスを感じているとき、体内ではコルチゾールというホルモンが分泌されています。このホルモンは血糖値を上げるなどして体を臨戦態勢にする、ストレスと戦う大切なホルモン。ところが慢性的にこの状態が続くと、自律神経のバランスが崩れて集中力が低下したり、イライラしやすくなります。
また、脳で記憶に関わる海馬という部位が委縮し、抑うつや不眠の症状などにつながるともいわれています。睡眠時間の不足もコルチゾールの分泌過多につながるため、ますますストレス耐性が低下するという悪循環に陥ってしまうのです。

図:睡眠不足による悪循環
「深部体温」がカギ!夕方の運動で寝つきを良くしよう
放課後の学校で有酸素運動

寝つきが悪い原因の一つに、脳や内臓の温度である深部体温が下がらないことが挙げられます。深部体温は起床後から上昇を始め、夜の就寝に向けて低下します。この温度差が大きいほど良質な睡眠につながります。そこでお勧めなのが、運動で深部体温を高めること。運動後は体が熱を放出しようと働き、深部体温が下がりやすくなります。特にコロナ禍で睡眠の質が下がったという人は、運動不足が原因かもしれません。快眠のために適した運動時間である夕方に30分から60分程度、ウォーキングやサイクリングなど、じんわりと汗ばむ程度の有酸素運動を行うとよいでしょう。

階段昇降 最初は呼吸が乱れないペースでOK。慣れてきたら背筋を伸ばし、腕を振り太ももを引き上げるように意識して上り下りすると効果が高まる。 画像:階段昇降を行う男性のイラスト 椅子に座ったままできるエクササイズ 1 浅く椅子に座り、手は太ももの上に置く。手はデスクの上でもOK。 2 片足を伸ばしてかかとをつけて元の位置に戻す。左右交互に1秒ずつリズムよく行う。 画像:エクササイズを行う女性のイラスト

ココロとカラダを満たすくつろぎレシピ 自然の甘みが食欲をそそる ホタテの漬け丼

ココロとカラダを満たすくつろぎレシピ 自然の甘みが食欲をそそる ホタテの漬け丼

材料(2人分)

ホタテ刺身:8枚、ご飯(発芽玄米または白米):
2杯分、卵黄:2個、青じそ:6枚
たれ(しょうゆ:大さじ2、本みりん:小さじ2、出汁:小さじ1)

写真:ホタテの漬け丼 610kcal(1人分)

材料(2人分)

ホタテ刺身:8枚、ご飯(発芽玄米または白米):2杯分、卵黄:2個、青じそ:6枚
たれ(しょうゆ:大さじ2、本みりん:小さじ2、出汁:小さじ1)

つくり方

  • 1 大きめの耐熱容器の中でたれを合わせる。ラップをして電子レンジ(600ワット)で1分弱加熱する。
  • 2 粗熱が取れたらホタテを入れ(大きければ半分に切る)、冷蔵庫で30分漬ける。
    青じそは細切りにして水に5分浸した後、キッチンペーパーなどで水気をふく。
  • 3 ご飯を丼に盛り付け、2と卵黄を乗せる。お好みでわさびやおろし生姜、山椒、ゴマ、三つ葉などを添えても。
写真:アレンジ活用 ホタテとチンゲン菜のソテー

アレンジ活用 ホタテとチンゲン菜のソテー

写真:アレンジ活用 ホタテとチンゲン菜のソテー

チンゲン菜2株を食べやすい大きさに切り、水に5分さらしたらザルに上げる。フライパンにごま油大さじ1と唐辛子1本を入れて中火にかけ、チンゲン菜の茎部を炒める。ごま油が全体に回ったら、葉と漬けたホタテ、たれ大さじ2から3を合わせて炒める。

睡眠の質を高め、夏の疲れを癒す

ホタテはグリシンというアミノ酸の成分を豊富に含んでおり、睡眠の質を高める効果があります。そのほか、タンパク質、ビタミンB12、タウリンも多く、疲労改善にも力を発揮する食材です。さらに、卵に多く含まれるトリプトファンは、セロトニンやメロトニンの元となるもの。精神を安定させ、安眠の手助けをしてくれます。

写真:レシピ提供 料理家 井澤由美子
レシピ提供
料理家 井澤由美子