更新日: 2018年06月25日

Health共済フォーラム 2018年6月号掲載「Health&Care」

歯周病は全身に関わる病気 お口の問題だけではない!

日本人の歯周病の有病率は、20歳代でも7割、30歳代から50歳代では8割にも達すると言われ、歯を失う最大の原因にもなっています。さらに、歯周病菌が作り出す炎症性物質が、糖尿病や心疾患など恐ろしい病気のリスクを高めることも分かってきました。あなたのお口は、大丈夫ですか?

歯周病ってどんな病気?

歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯磨きが不十分で歯と歯肉の境目に細菌が溜まると、歯周組織(歯肉・歯根膜・歯槽骨)に炎症が起こります。そして、進行すると歯を支える歯槽骨が溶けて歯がグラグラし、最後には抜けてしまうという恐ろしい病気です。
しかし、歯周病はほとんど痛みの症状が表れないまま静かに悪化し、歯肉からの出血や歯のぐらつきなどの自覚症状が表れた頃には治療が困難な状態になっているケースも多いのです。

歯周病の進行

画像:歯周病の進行 初期

プラークを放置すると歯石となり、歯周病を悪化させる要因になる。まだ自覚症状はほとんどない。

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画像:歯周病の進行 歯肉炎

歯と歯肉の間の歯肉溝が開き、歯肉ポケットが形成される。歯を磨くと出血が起こる。

右矢印
画像:歯周病の進行 中等度歯周病

歯を支える歯槽骨や歯根膜の破壊が始まる。歯肉溝もさらに開き、歯磨き中でなくても出血する。

右矢印
画像:歯周病の進行 重度歯周病

歯肉は化膿して膿がひどくなり、歯槽骨が半分以上溶け、口臭もきつくなる。

虫歯・歯周病・歯槽膿漏の違い

虫歯は歯の病気、歯周病は歯肉の病気という違いがあり、原因となる菌も異なります。虫歯の原因菌はミュータンス菌であるのに対し、歯周病の原因菌はプロフィロモナス・ジンジバリス(P.G菌)やアクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A .A菌)などが特定されています。また、歯周病のうち炎症が歯肉だけに留まっている状態を歯肉炎、歯槽骨にまで広がり歯が抜けるほどの重篤な状態を指すのが歯槽膿漏です。

歯肉の健康に効くレシピ 初夏の野菜と小魚のピクル酢(マリネ)

材料(作りやすい分量)

グリーンアスパラガス:4本、玉ねぎ(小):半個、パプリカ:1個、食べる煮干し:好みの量、レーズンなど好みのドライフルーツ:50g、しょうがスライス:3枚、にんにく:1片、赤唐辛子:1本、昆布:3×3cm、米酢:150cc、水:600cc、砂糖:大さじ6、塩:大さじ1 1/2

写真:初夏の野菜と小魚のピクル酢(マリネ)

作り方

1 アスパラガスは根元の部分を落とし、硬めに塩茹でした後冷水にとり、食べやすい大きさに切る。玉ねぎはくし切り、パプリカは乱切りにして、にんにくは皮をむく。
2 ピクルス液を作る。小鍋に米酢、水、砂糖、塩、皮をむいたにんにく、しょうが、赤唐辛子を合わせて沸騰させ、3分ほど中火にかけて冷ましておく。
3 消毒した容器に全てを入れて冷蔵庫に。半日以上経ったら食べ頃。ピクルス液に完全に浸かった状態にしておけば、2週間保存可能。

知っておきたい栄養豆知識

お酢につけることで、小魚と昆布のカルシウムが摂取しやすくなります。
アスパラガスに含まれるアスパラギン酸は疲労回復効果が高く、その穂先には血管を丈夫にするルチンを多く含有。パプリカのビタミンCと一緒に摂ることにより、血管の強化作用を高めます。

画像:料理家 井澤由美子

レシピ提供:
料理家 井澤由美子

歯周病と関連する5つの疾患

画像:歯を痛めている人

早産・低体重児出産

原因はさまざまありますが、歯周病もその一つ。炎症性物質が子宮収縮などを誘発するためと考えられています。とくに妊娠中はホルモンバランスの変化で炎症が生じやすく、歯周病になりやすいため注意が必要です。

画像:早産・低体重児出産

糖尿病

歯周病により歯肉の中で多量に作られる炎症性物質は、血糖値を安定させるインスリンの働きを弱める作用を持ち、糖尿病のリスクを高めます。また、糖尿病は免疫力を低下させるため、歯周病を進行させるという悪循環に陥ります。

画像:糖尿病

心疾患

炎症性物質が血管内に侵入すると、血管壁にも炎症が生じます。万が一これが心臓の血管で起こり、炎症部分が動脈硬化を起こせば、心筋梗塞や狭心症など命に関わる恐ろしい心疾患の引き金にもなります。

画像:心疾患

骨粗しょう症

加齢によるホルモンバランスの乱れは、骨密度を低下させ骨粗しょう症を招きます。同時に、炎症が起こりやすくなり、歯槽骨も脆くなることから、歯周病も進行しやすくなります。双方とも初期の自覚症状は乏しいため、定期的な検査を行いたいものです。

画像:骨粗しょう症
画像:歯を痛めている人

誤嚥性肺炎

唾液中の歯周病菌が気管に入ると、肺炎を起こしやすくなります。通常、飲み込んだものは食道に入り、誤って気管に入っても咳で排出されます。しかし、加齢などに伴い、ものを飲み込む嚥下(えんげ)機能が低下していると肺炎も起こしやすいため、口腔ケアが不可欠です。

画像:誤嚥性肺炎

歯周病の予防と対策

歯周病の予防には、毎日のブラッシングによる口腔清掃(プラークコントロール)が不可欠です。ブラッシングだけでは磨きにくい奥歯や歯間部のプラークには、デンタルフロスや歯間ブラシの使用もお勧めです。以下の歯周病を招きやすい生活習慣を改めることも大切です。

歯周病を
招きやすい
生活習慣

1喫煙 → 歯肉の血流を妨げて歯周病菌に対する抵抗力が低下
2疲労 → 免疫力を低下させるため歯周病が悪化しやすい状態に
3よく噛まずに食べる → 唾液の分泌が減少し細菌が繁殖しやすくなる
4間食が多い → 細菌に栄養を与え続けることになり増殖が速くなる

食後の習慣に30秒間の舌回し体操

口を閉じた状態で歯肉の外側に沿って舌を回すことで、唾液の分泌が促進されて歯周病の予防にも役立ちます。
右回りと左回りに10回ずつ、30秒程度かけて行いましょう。

定期的に歯科検診を受けましょう

どんなに丁寧に歯を磨いたつもりでも、セルフケアでは磨き残しがあるものです。歯科医院によっては、専用の機器や研磨剤を用いて歯間や歯肉溝の汚れを取り除く専門的な歯面清掃「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」を実施しています。歯科医院を受診し、磨き残したプラークを定期的に取り除くことや、歯周病検診を受けることが、健康な歯を守るためには不可欠です。

画像:定期的に歯科検診を受けましょう