更新日: 2020年09月25日

Health共済フォーラム 2020年9月号掲載「Health&Care」

心を整え体も元気に 幸福に生きるためのホルモンのお話

新型コロナウイルスの影響で、仕事でも私生活でもさまざまな我慢を強いられる日々が続いています。「気持ちが落ち込む」「なんだか疲れた」など、心身ともにスッキリしないという人も多いでしょう。こんなときは、体内で分泌されるホルモンの力を借りて元気を取り戻すのがおすすめです。「幸せホルモン」とも呼ばれる、さまざまなホルモンの基礎知識とその増やし方を紹介します。

幸せホルモンっていったい何?

画像:神経伝達物質のひとつ、幸せホルモン

ホルモンとは、「刺激する」という意味のギリシャ語に由来する化学物質です。私たちの体内では、甲状腺や膵臓、生殖腺などさまざまな場所で、それぞれに違った働きを持つホルモンが作られており、血液によって全身に運ばれています。そしてさまざまな情報を伝達しながら、内臓や体の機能を整える役割を担っています。
一方、神経細胞の間で情報を伝達し、興奮や鎮静などの反応を引き起こす脳内の化学物質も存在し、これらは「神経伝達物質」と呼ばれています。中でも、ストレスや痛みを和らげたり、幸福感をもたらしたりするものは、”幸せホルモン”とも呼ばれ、不足すると抑うつ状態に陥る場合もあります。

三大幸せホルモンとは

心の安定をもたらす

セロトニン

意欲がみなぎる

ドーパミン

優しい気持ちになる

オキシトシン

役割と影響 幸せホルモンの代表格であり、自律神経を整えて幸福感をもたらし、心を平常に保つのに役立つ「安定のホルモン」。食欲のコントロールにもひと役買い、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の原料にもなる。不足するとネガティブ思考に陥りやすくなり、訳もなく悲しくなるなど悲哀感に襲われることも。 さまざまな行動の原動力になるヤル気を促し、幸福感を高める働きを持つ。仕事や学習に必要な情報を記憶・処理する「ワーキングメモリー」にも影響を与えるため、分泌が促進されると効率アップにもつながる。達成感や快感、感動などももたらすため、不足すると無気力だけでなく無感動や無関心なども引き起こす。 不安感や恐怖心を和らげて安らぎを与え、優しい気持ちにさせてくれるオキシトシン。もともと、出産や育児の際に分泌されるホルモンとして知られていたが、母子間以外でも分泌されることが分かってきた。ストレス軽減や免疫機能アップなどの効果の他、社交性や認知能力を高める作用があるともいわれている。
分泌を促すには 起床後すぐにカーテンを開けて室内に日光を取り入れる。通勤時に朝日を浴びるため、一駅歩いたり自転車を使ったりするのも有効。一定のリズムで体を動かす運動でも分泌が促されるため、踏み台昇降運動などもよい。1日に3分程度、呼吸を整えて瞑想を行ってみるのもおすすめ。 目標を達成した後に分泌され、その後”ご褒美”が与えられるとさらに分泌が促される。そのため、目標を設定し、いくつも達成できる環境をつくるとよい。大きな目標である必要はなく、皿を洗い終えたらお気に入りのドラマを見る、書類を1枚書き終えたら好きなコーヒーを飲むなどでよい。これで分泌がより活性化する。 分泌の鍵を握るのはスキンシップ。握手をする、手をつなぐ、抱き合うなど、近しい間柄の人とのスキンシップにはより高い効果が期待できる。肌触りの良い服やタオルを使うのもよい。また、誰かを助けたり物を分け与えたりするなど、人に優しくする行動でも分泌が促される。
心の安定をもたらす

セロトニン

役割と影響 幸せホルモンの代表格であり、自律神経を整えて幸福感をもたらし、心を平常に保つのに役立つ「安定のホルモン」。食欲のコントロールにもひと役買い、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の原料にもなる。不足するとネガティブ思考に陥りやすくなり、訳もなく悲しくなるなど悲哀感に襲われることも。 分泌を促すには 起床後すぐにカーテンを開けて室内に日光を取り入れる。通勤時に朝日を浴びるため、一駅歩いたり自転車を使ったりするのも有効。一定のリズムで体を動かす運動でも分泌が促されるため、踏み台昇降運動などもよい。1日に3分程度、呼吸を整えて瞑想を行ってみるのもおすすめ。
意欲がみなぎる

ドーパミン

役割と影響 さまざまな行動の原動力になるヤル気を促し、幸福感を高める働きを持つ。仕事や学習に必要な情報を記憶・処理する「ワーキングメモリー」にも影響を与えるため、分泌が促進されると効率アップにもつながる。達成感や快感、感動などももたらすため、不足すると無気力だけでなく無感動や無関心なども引き起こす。 分泌を促すには 目標を達成した後に分泌され、その後”ご褒美”が与えられるとさらに分泌が促される。そのため、目標を設定し、いくつも達成できる環境をつくるとよい。大きな目標である必要はなく、皿を洗い終えたらお気に入りのドラマを見る、書類を1枚書き終えたら好きなコーヒーを飲むなどでよい。これで分泌がより活性化する。
優しい気持ちになる

オキシトシン

役割と影響 不安感や恐怖心を和らげて安らぎを与え、優しい気持ちにさせてくれるオキシトシン。もともと、出産や育児の際に分泌されるホルモンとして知られていたが、母子間以外でも分泌されることが分かってきた。ストレス軽減や免疫機能アップなどの効果の他、社交性や認知能力を高める作用があるともいわれている。 分泌を促すには 分泌の鍵を握るのはスキンシップ。握手をする、手をつなぐ、抱き合うなど、近しい間柄の人とのスキンシップにはより高い効果が期待できる。肌触りの良い服やタオルを使うのもよい。また、誰かを助けたり物を分け与えたりするなど、人に優しくする行動でも分泌が促される。

まだまだある心に効く幸せホルモン まだまだある心に効く幸せホルモン

画像:ジョギング
β-エンドルフィン
気分の高揚や幸福感、陶酔感をもたらし、脳内麻薬とも呼ばれる。長距離を走ったときの”ランナーズハイ”の状態や、美味しいものをたっぷり食べたときなどに分泌が促進される。
GABA(ギャバ)
自律神経のバランスを整えて神経の高ぶりを抑え、気持ちをリラックスさせる働きを持つ。アミノ酸の一種で、乳酸発酵した漬け物やきのこなどにも多く含まれるため食事に取り入れるとよい。
ノルアドレナリン/アドレナリン
ストレス状態に陥った際に分泌されて全身を駆け巡り、体を防御するために働いてくれる。集中力や行動力を高める働きも持つ。

腸内環境を良くしてセロトニンの合成を促進 腸内環境を良くしてセロトニンの合成を促進

画像:腸のセロトニンと脳内のセロトニンのつながり

幸せホルモンの代表格であるセロトニンは、90%以上が腸で生み出されています。とはいえ、腸でできたセロトニンが脳に運ばれて使われるわけではありません。脳に物質が運ばれるためには、「血液脳関門」というフィルターを通過する必要がありますが、セロトニンはこのフィルターを通れないのです。つまり、脳で作られるごく少量のセロトニンが、私たちに幸福感をもたらす役割を担っているわけです。
しかし、腸で作られるセロトニンに意味がないわけではありません。腸と脳は密接につながっており、腸のセロトニンが増えるほど、脳内のセロトニン合成が進むといわれているためです。腸のセロトニンは、腸内細菌のバランスが整うことで盛んに作られます。心の安定のためには、一見無関係に思える腸内環境を整えることも大切なのです。