更新日: 2023年05月29日
直営病院コラム九州中央病院
九州中央病院 管理栄養士 櫻井 春香
今回は、いつまでも健やかな毎日を送るために、腸の働きや腸内フローラ、そして腸内フローラを整える食生活のポイントについて考えてみましょう。
腸は第2の脳ともいわれ免疫システムをコントロールしています
腸は食べ物を消化するだけでなく、肥満や老化などさまざまな病気と深く関係しています。特に体内に入ったウイルスや細菌、異物などから身体を守る免疫システムをコントロールする力があります。

体の中に生息する細菌の種類は11万種以上で、そのうち大腸には3万3,000種、個数にすると1,000兆個、重さにすると1.5から2キログラムの細菌が棲んでいます。それらの細菌は種類ごとに塊となって腸の壁に隙間なくびっしりと張り付いており、まるで品種ごとに並んで咲くお花畑に見えることから「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。正式な名称は「腸内細菌叢」です。


善玉菌にはビフィズス菌や乳酸菌などがあり、ビタミンを作り、消化吸収を助けます。感染防止や免疫力アップにもつながり、健康維持や老化を防いでくれます。
悪玉菌はウェルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌があり、腸内を腐敗させ、有害物質やガスを作ります。悪玉菌が増えると便秘や下痢などお腹の調子が悪くなることがあります。
日和見菌は状況によって善玉菌の味方になったり、悪玉菌の味方になったりします。


腸内フローラのバランスは、「善玉菌が2割、悪玉菌が1割、日和見菌が7割」が理想的といわれていますが、ちょっとしたことで崩れてしまいます。
その要因には食生活の乱れ、運動不足、睡眠不足、ストレスなどによる自律神経の乱れ、便秘、細菌感染、加齢などがあります。これらの要因で悪玉菌が増加し、日和見菌も悪玉菌の味方になり、腸内フローラのバランスが崩れてしまうのです。加齢による悪玉菌の増加は避けられませんが、腸内フローラが理想のバランスとなるよう、食事や適度な運動、休息など生活習慣を見直す、いわゆる「腸活」に積極的に取り組んでみましょう。

悪いイメージのある悪玉菌ですが、全くいなくなると善玉菌が働かなくなってしまい、食べ物の消化や吸収がうまくいかなくなります。悪玉菌も人間が生きていく上で、なくてはならない菌なのです。
大切なのは、悪玉菌を過剰に増やさないようにすること、そして、悪玉菌より善玉菌が多い腸内フローラに整えるためにも腸活を意識的に行い、日和見菌を味方につけて善玉菌を優勢にしておくことです。この2点が健康を維持することにつながります。



腸内フローラのバランスを整えるため、食生活においては、次の3つが大切なポイントとなります。
1. 毎日3食規則的にバランス良く食べる
2. 善玉菌を含む食品(発酵食品や乳酸菌飲料)を食べる
3. 善玉菌のエサとなる食品(オリゴ糖と食物繊維)も一緒に食べる
このうち、2と3について、詳しくお話ししていきます。

2. 善玉菌を含む食品(発酵食品や乳酸菌飲料)を食べる
善玉菌を含む食品には、発酵食品や乳酸菌飲料があります。
代表的なものとして、ヨーグルト、納豆、チーズ、甘酒、ぬか漬け、キムチ、みそなどがあります。これらの食品はビフィズス菌、納豆菌、麹菌、乳酸菌などの善玉菌を含んでいます。
食べた後の善玉菌は、腸内にある程度の期間は存在しますが、しばらくすると体の外へ排出されるので毎日食べることが大切です。ただし、塩分や糖分の多い食品もあるので食べ過ぎには注意しましょう。

3. 善玉菌のエサとなる食品(オリゴ糖と食物繊維)も一緒に食べる
善玉菌のエサとなる食品には、オリゴ糖や食物繊維を多く含むものが該当します。
オリゴ糖は、一般的にお腹の調子を整える難消化性のオリゴ糖のことをいい、消化されずにそのまま大腸に到達して善玉菌のエサとなることで腸内環境を整えてくれます。オリゴ糖を含む食品には、玉ねぎ、長ねぎ、バナナ、ゴボウ、大豆や大豆製品などがあります。

食物繊維も難消化性のオリゴ糖と同様に大腸まで到達する食品です。野菜や果物、納豆などの大豆製品、こんにゃくなどに含まれています。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がありますが、どちらも便秘改善など腸にうれしい効果が期待できますので、いろいろな食品から多種類の食物繊維を摂りましょう。
食事のメニューとしては洋食に偏った食事よりも、大豆製品や野菜が摂りやすい和食がお勧めです。

また、善玉菌と善玉菌のエサを多く含む食品を一緒に摂ることもお勧めです。
左図のように、パンとチーズや納豆を合わせて忙しい朝に、また豆腐にキムチをのせて夕食の副菜になど、手軽に摂ることができます。ぜひ実践してみてください。

今回は、腸内フローラについてお話ししました。本コラムが皆さまの日々の健康に役立つ情報となれば幸いです。
基本情報
住所 | 〒815-8588 福岡県福岡市南区塩原3丁目23番1号 |
電話番号 | 092-541-4936 |
ホームページ | https://www.kyuchu.jp |
病院概要
理念 | 病んでいる人の人権を尊重し、健やかで心豊かな社会をつくるための医療を提供します |
許可病床数 | 330床(一般292床、ICU8床、HCU16床、緩和14床) |
診療科目 | 内科、糖尿病・内分泌内科、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、肝臓内科、膵臓内科、脳神経内科、腎臓内科、心療内科、精神科、リウマチ科、外科、消化器外科、乳腺外科、呼吸器外科、血管外科、肝臓・胆のう・膵臓外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、病理診断科、麻酔科、歯科口腔外科 |
沿革 | 九州中央病院は、九州各県公立学校教職員の結核性疾患治療対策のため、昭和32年5月に開設されました。 昭和40年には結核罹患率の逓減により、病院機能を結核診療から一般診療に転換し、「総合病院」を標榜しました。 昭和47年には1病棟だけ残っていた結核病棟を教職員の検診施設に転換し、人間ドック、成人病教室等の健康管理事業充実のため健康管理センターを設置しました。 平成の時代には「救急医療」「がん医療」「地域連携」の強化に取り組み、救急患者の24時間受け入れ対応、全室個室の入院棟新築、緩和ケア病棟新設、健康管理センター棟新築等さまざまな整備を行い、現在は救急告示病院、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、日本医療機能評価機構認定病院等に承認・指定され、人間ドック受診者数5,088名、救急患者数9,509名、紹介患者数17,927名(数値は全て令和3年度実績)と、地域の中核病院として急性期医療を担っています。 |
(令和5年5月現在)






