更新日: 2019年12月26日

Health共済フォーラム 2019年12月号掲載「Health&Care」

喫煙年数の長い人は要注意 呼吸困難に陥るCOPD(慢性閉塞性肺疾患)とは

若い頃と比べて、少しの運動でも息が切れやすくなった…。年齢を重ねれば当たり前のことのように思えますが、肺の炎症によって酸素を取り入れにくくなる「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」という病気が原因の可能性もあります。喫煙経験のある人がかかりやすく、一度発症すると完全に治すことが困難であるため、早めの検査が不可欠です。

COPDってどんな病気?

慢性閉塞性肺疾患は、代表的な慢性呼吸器疾患の一つであり、英語では「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」。4つの単語の頭文字を取ってCOPDと呼ばれています。かつては「肺気腫」と呼ばれていた病気と、「慢性気管支炎」とが合わさった、比較的新しい病気の概念です。
COPDにかかるリスクは、長年にわたって粉塵等を吸い込むことや大気汚染によって高まりますが、最大の原因は喫煙と考えられています。
もちろん、タバコを吸っているからといって必ずかかるわけではなく、喫煙者がCOPDにかかる割合は20%前後といわれています。その一方で、COPD患者の90%以上が喫煙者であるという報告もあります。

画像:正常な人の肺 COPDの人の肺

これらの原因によって肺に炎症が起きると、気管支がむくみ、炎症部分には痰が大量に分泌されます。そして、気管支の中の空気の通り道が非常に狭くなり、呼吸がしにくくなります。また、気管支の先端で血液中に酸素を送り込む役割を担う「肺胞」と呼ばれる袋状の器官が、炎症により破壊されます。すると、どんなに呼吸をしても、血液の中に酸素を取り込むことができなくなってしまいます。

COPDにはどんな症状があるの?

この病気が恐ろしいのは、自覚症状が分かりにくく、静かにゆっくりと進行することです。ごく初期のCOPDでは、運動をしたときの息切れの他、軽い咳や痰などの症状が表れますが、多くの人は年齢のせいだと思い込んだり、単なる風邪だと勘違いをして放置してしまいがちです。
肺がん検診などで胸部X線検査を受けている人でも、初期のCOPDでは異常が認められにくいため、安心はできません。右のセルフチェックで思い当たる症状がある人は、早めに呼吸器科の専門医を受診しましょう。

画像:COPD セルフチェック
自覚症状を放っておくと・・・

安静にしていても呼吸が苦しくなり、日常生活にも支障を来すようになります。体を動かすことが怖くなって家に引きこもり、うつ状態になる人もいます。やがて呼吸困難が進んで意識障害を起こし、最悪の場合、命の危険にさらされることも。

COPD患者にはただの風邪が脅威になる

COPDには、症状が急激に悪化する「急性増悪」が起こることがあります。激しい咳が続く、息切れが強くなり息苦しさが増す、痰の量が増える、発熱が続くなどの症状が見られます。原因となるのは、主に細菌やウイルスによる呼吸器感染症、つまり風邪やインフルエンザです。
息切れを恐れて引きこもりがちになるCOPD患者は、さらに食欲が低下することで栄養状態が悪くなり、免疫力が低下。感染症にかかりやすくなり、COPDを悪化させるという悪循環にも陥りかねません。適度に体を動かす方法を知り、体力づくりを行うことも大切です。

画像:COPD悪化のスパイラル

食事を楽しみながらしっかりカロリー摂取 冬の彩りいなり寿司

COPDになると多くのエネルギーが必要となります。特にCOPD患者に多い痩せタイプの人は、良質なタンパク質や脂質を多く含む料理から効率よくエネルギーを摂取しましょう。華やかな見た目に食欲も湧き、小腹が空いたときに手軽につまめるいなり寿司を紹介します。
(注記)食事療法は主治医の指導の下、行ってください。

写真:食事を楽しみながらしっかりカロリー摂取 冬の彩りいなり寿司

1 油揚げを煮る

材料

油揚げ:4枚、出汁:1 1/2カップ、砂糖・みりん:各大さじ1、醤油:大さじ1 1/2

作り方

鍋に材料を全て入れて落しぶたをする。煮汁が少なくなるまで煮て、そのまま冷ます。

2 蓮根とゴマの寿司飯を作る

材料

米:2合、昆布(3×3cm):1枚、蓮根:70g、柚子の皮:適宜、果汁:小さじ2、すりゴマ:大さじ2、A(酢:大さじ2、出汁・砂糖:各大さじ1)、B(酢:60cc、砂糖:大さじ2 1/2、粗塩:小さじ2/3)

作り方

1 昆布をのせて2カップ弱の水で少し硬めに米を炊く。蓮根は薄切りにし、酢水に5分さらして水気を拭き、熱湯でさっとゆでて、Aに浸す。
2 炊きたてのご飯を盤台かボウルに移し、Bを熱いうちに回しかける。蓮根を入れ、しゃもじで切るように全体をよくなじませ、固く絞ったふきんをかぶせておく。冷めたら柚子の皮・果汁、すりゴマを加えてかき混ぜる。

3 トッピングの具材を作る

(1)適度な甘味と酸味で食欲が増す“酢”き焼き

材料

牛こま肉:50g、牛脂または油:小さじ1、タレ(米酢:小さじ1、砂糖:小さじ1強、醤油:小さじ2)

作り方

フライパンを中火で温め、牛脂をなじませて肉を両面焼き、タレを絡める。

(2)大豆の栄養が凝縮した高野豆腐入りの鶏“四”目

材料

鶏もも肉(細切れ):40g、干し椎茸:2g、人参:1/5本、高野豆腐:5g、醤油:小さじ2、酒・みりん:各大さじ1

作り方

干し椎茸は水1カップで戻して薄切りにする。人参は細切りにする。鍋に材料の具材と調味料、椎茸の戻し汁を全て入れ、煮汁が少なくなるまで煮詰めて冷ます。

その他の具材(ほうれん草のゴマ和え・錦糸卵・ゆでエビ・イクラ・刻み三つ葉・菊)は、出来合いの惣菜なども活用してお好みの量でそろえる。

4 油揚げに寿司飯と具材を詰める

油揚げの煮汁を手につけ、片手に収まる程度(約50g)の寿司飯を俵状に握る。油揚げは軽く絞って半裁し、袋状に開いて寿司飯を詰める。具材を彩りよく組み合わせ、寿司飯の上にトッピングして完成。