更新日: 2024年02月26日
直営病院コラム四国中央病院
四国中央病院 医務局臨床工学科総括主任臨床工学技士 透析センター副センター長
医療機器安全管理責任者 福原正史
病気の影響でお腹に水がたまる「難治性腹水」をご存じですか?治療法として手術がありますが、合併症が懸念されます。
そこで今回は、おいしく食事が摂れ、活動性も上がる新しい治療法の「腹水濾過(ろか)濃縮再静注法(CART)」をご紹介します。
腹水って何?
お腹にある臓器をつつむ膜を腹膜といいます。腹膜は、臓器と臓器の摩擦を少なくするために腹腔とよばれる隙間を作っています。腹腔には通常20から50ミリリットルの水が入っていますが、さまざまな病気の影響で通常よりたくさん水がたまった状態を「腹水」といいます。


腹水の基礎知識|腹水濾過濃縮再静注法
(CART)(asahi-kasei.co.jp)より引用
腹水がたまる原因は?
腹水がたまる病気は以下のように多くありますが、最も一般的な原因は、肝臓や腸の表面から漏れ出た水が腹腔内に貯留することです。水が大量にたまると腹部は大きく膨らみ、内臓が圧迫されることで吐き気や嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感、息切れなどが起こり、日常生活に影響を及ぼします。
腹水がたまる病気
・がん
・心不全
・腎不全
・肝硬変
・ウイルス性肝炎
・膵炎(すいえん)
・結核性腹膜炎

腹水がたまってきた場合、通常、塩分制限や利尿剤、アルブミン(タンパク質)の補充などを行いますが、通常の治療法で改善しない腹水のことを「難治性腹水」といいます。
難治性腹水の治療として、外科的な手術(腹膜頸(けい)静脈シャント、経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術)がありますが、敗血症や心不全、肝性脳症などの合併症があるため、当院では、腹水濾過濃縮再静注(CART)による治療を積極的に行っています。


腹水を抜いて貯留バッグに取り出す。

特殊なフィルターで腹水中の血球、悪い細胞を取り除く。
その後、別のフィルターで濃縮する。

step.2で濃縮した腹水を点滴して栄養分を腹腔内に戻す。

株式会社タカトリホームページ
医療機器分野 医療機器事業 製品情報 より引用
CARTは、外科的な治療法に比べ安全性に優れ、自己腹水の栄養(タンパク質等)を再利用するため、血液製剤のような感染やアレルギーの心配はありません。
さらに、通常の治療法で効果が見られなかった方でも、腹水が無くなったり、たまるまでの期間が長くなったり、利尿剤の内服のみで腹水のたまり方をコントロールできるようになったりするなどのケースがあります。また、腹部の膨張による圧迫感の軽減と栄養の補充により、消化器症状(吐き気、嘔吐、食欲不振)、一般症状(疼痛(とうつう)、倦怠感、睡眠障害、ストレス、息切れ)が軽減し、おいしく食事が摂れ、活動性も上がることが報告されています。





東京大学 医科学研究所附属病院 先端緩和医療科
伊藤哲也氏よりスライド提供

当院では、従来のCARTにさまざまな工夫を加え、処理速度や安全性が飛躍的に改善した治療法
『e-CART』を使用しています。
e-CARTは、当院の臨床工学科と企業との共同開発によって誕生しました。
「妻の転院先ではCARTをやっていないのですが、何とかなりませんか?」私たちに届いた患者さんの願いの一つです。「臨床工学で患者さんの願いを叶えたい!」そんな思いから、医療現場の声を聴き、徹底的にシンプルに、使いやすさを追求しました。その結果生まれたe-CARTにより、今までよりも多くの病院でCARTを行えるようになりました。

e-CART

第32回日本臨床工学会
第5回医工連携Award「優秀賞」受賞

腹水がたまると必ずしも原因治療の中止や日常活動が制限されるというわけではありません。
e-CARTのような新たな治療法もありますので、難治性腹水や腹部が張っていて苦しいなどの症状でお困りでしたら、当院にご相談ください。
基本情報
住所 | 愛媛県四国中央市川之江町2233番地 |
電話番号 | 0896-58-3515 |
ホームページ | https://www.shikoku-ctr-hsp.jp/ |
病院概要
理念 | Smile(笑顔)、Speed(迅速)、Sincerity(誠意)を基調として、質の高い医療を提供し、地域と共に成長し、安心・安全を未来に繋ぐ |
許可病床数 | 275床(一般229床、精神46床) |
診療科目 | 内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、心療内科、精神科、小児科、外科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、緩和ケア外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、リハビリテーション科、麻酔科、病理診断科 |
沿革 | 四国中央病院は、全8病院の公立学校共済組合直営病院の中で、6番目の病院として愛媛県川之江市(現 四国中央市)に昭和34年に開設されました。 当初は、内科、外科、耳鼻咽喉科、歯科の4科で診療が開始されましたが、その後、疾病構造の変化と地域医療の需要に対応して順次診療科を増設し、昭和41年に総合病院としての認可を受け、平成6年6月に病院第一期再開発により、現在の病院(鉄筋コンクリート造 地下1階、地上6階)を新築しました。その後、ハード・ソフト両面において充実を図り、現在の26診療科、病床数275床(一般229床、精神46床)となっています。 |
(令和6年2月現在)



徒歩約15分
タクシー約5分


車で約20分

東へ約1キロメートル